皮下脂肪間質細胞の拍動心筋細胞分化のメカニズムの解明と心筋再生治療への応用

高島 伸一郎 助教
金沢大学
附属病院

研究分野: 循環器内科学・幹細胞・再生治療・血管リモデリング

研究概要

高齢者人口の増加により心不全患者は増加しており、2030年には国内で130万人に上ると推定されています。心不全は進行性の病気です。高度に心機能が低下する重症心不全患者は薬物治療の効果が小さくなり、最終的には心臓移植が必要となりますがドナー不足が深刻な状況です。既存医療を補完する臓器不全治療の開発が急務でありその一つとして再生医療が注目されています。iPS細胞は多系統細胞への分化誘導が可能であり、分化誘導した細胞塊あるいはシート状組織を移植することで、失われた機能の改善が見込まれます。しかしiPS細胞から誘導する心筋細胞は、腫瘍化リスクや高コストなど課題が多いことから、非iPS細胞を用いた再生治療研究も必要であると考えています。皮下脂肪組織の間質に存在する細胞(adipose SVF細胞)は幹細胞を含んでいます。体細胞由来であることから腫瘍化リスクが少なく、美容外科的手法で低侵襲的に大量に採取できることから再生治療ソースとしては高い魅力があります。これまでの研究において、adipose SVF細胞は、iPS細胞とは異なり拍動する心筋細胞へ分化誘導することはほぼ不可能であるとされてきました。私は成体マウスのadipose SVF細胞の初代培養において、一部の細胞集団から自律拍動する細胞が出現する現象を発見し、この拍動細胞が心室様心筋細胞であることを示し報告しました (Takashima S. Sci Rep 2021)。しかしAdipose SVF細胞の一部の細胞が初代培養において拍動心筋細胞に分化する詳細なメカニズムは不明です。また拍動心筋細胞の出現頻度が低いことも課題です。私はこれまでに転写因子Mef2cをadipose SVF細胞に強制発現させると拍動心筋細胞が最大2000倍にまで増加することを確認しました。以上の自身の基礎的成果から、非iPS細胞であるadipose SVF細胞を、iPS細胞と同様に「拍動心筋細胞に選択的に分化誘導し収量を増幅できる」実現可能性を着想しました。本研究ではAdipose SVF細胞の拍動心筋分化メカニズムの解明と拍動心筋細胞の分化誘導・増幅法の開発を目的とします(図1)。本研究は重症慢性心不全患者に対する新しい心筋補充治療の創成につながると考えています。皆様のご理解と温かいご支援をどうぞよろしくお願いいたします。

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