子宮頸がん主要因タンパク質複合体の構造動態を理解する

紺野 宏記 准教授
金沢大学
ナノ生命科学研究所

研究分野: 生化学、分子生物学、生物物理学

研究概要

タンパク質の翻訳後修飾の1つであるユビキチン化は、細胞内タンパク質の選択的分解、DNA修復、細胞周期、転写、翻訳、シグナル伝達、免疫などほぼすべての生命システム(細胞内プロセス)の制御に関与しています。このため、ユビキチン化による細胞内プロセスの制御機構の異常は、癌、神経疾患、ウイルス感染症などの疾病の発症に深く関与しています。標的タンパク質にユビキチンを付加する役割はユビキチンリガーゼ(E3)が担っており、E3の1つであるE6APは、ヒトパピローマウイルス(HPV)感染によるウイルス由来のE6タンパク質と結合すると癌抑制因子p53をユビキチン化してプロテアソームによるp53の分解を促進し、結果的に p53 の機能を喪失させます。現在、E6APおよびE6によるp53のユビキチン化は子宮頸がんの主要因であるとこも明らかになっています。本研究では、高い空間・時間分解能を併せもつため、タンパク質の形状とその動きを同時に観察できる高速原子間力顕微鏡(高速AFM)を用いて、E6AP/E6/p53複合体がどのように構築され、E6がどのようにE6APのユビキチン化活性を促進するかを明らかにすることを目指します。さらに、高速AFMを使ってE6APとE6の相互作用や構造動態に影響を与える化合物の探索も行い、将来的には子宮頸がん選択的に効く創薬開発への貢献も視野に入れて研究を行います。